トップ > ブログ >  > 「海賊と呼ばれた男」に学ぶ最高の会社の作り方

「海賊と呼ばれた男」に学ぶ最高の会社の作り方

2017.1.14 | ,
From:萩原 敬大(はぎわら たかひろ)

先日、大好きな小説「海賊と呼ばれた男」が、ついに映画化されたので観てきました。この作品の主人公 国岡商店の店主:国岡 鐵造のモデルは、おそらくあなたもご存知の会社「出光興産」の創業者:出光 佐三と言われています。

戦前、福岡の門司で創業した小さな会社が、どうやって売上高4兆円を超える大企業に成長できたのか。なぜ、小さくて資金もない会社に、次々と優秀な人が入社してきたり、しかもその社員たちは他社の社員の何倍も働いてくれるのか。

その原動力となった1つの強力な要素について、いくつかの事例と共に見ていきたいと思います。(※なお、今日の記事は作品のネタバレが含まれていますので、まだ見ていない方はご注意ください。)それではいきます…


国岡商店が存在する”理由”


この国岡商店を創った店主:国岡 鐵造の持つ能力には、先見性、決断力、アイデア、勇気など、起業家として秀でたところはたくさんありますが、、一番強かったのは、基本理念と、その理念を貫き続けた姿勢ではないかと思っています。

詳しくは、「海賊と呼ばれた男」の中で何度も出てきますが、、国岡商店の基本理念 = 国益のため。石油は将来必ず石炭に変わる重要なエネルギーになる。だから、日本の国益のため独立系の日本企業が、その石油を自ら確保し流通させなければならない。そのために国岡商店は存在している。この基本理念を一貫して貫き、店主の鐵造が自らの行動、言葉で繰り返し社員に語り続けたことが成長の原動力になりました。

当然ながら、このような崇高な基本理念を守り続けるのは容易ではなく、、何度も会社が潰れそうになるくらいの逆境があり、それが揺らぐ場面もありましたが、見事にそれを乗り越えています。例えば、、

 

 質の良い石油を安く提供するために、業界の悪習をぶち壊す:


門司で独立したてのころ、石油がまだマイナーだった時代なので、鐵造は営業で苦戦続きでした。毎日のようにある同業者からの嫌がらせや、他の業者は当たり前のようにやっている取引先からの袖の下の要求。

しかし、それに屈することなく、質の良い石油をできるだけ安く提供するため、馴れ合いでつながっている業界の慣習をぶち壊し、他の商会の縄張りの目が届かない海の上で、漁船を待ち構えて油を販売するという破天荒なことをやってのけます。(このエピソードから、国岡は海賊と呼ばれるようになったそうです。)


他社の何倍も働く優秀な社員が集まってくる:


戦後、日本での石油の供給を牛耳っていた「石油統制配給会社」の総裁から嫌がらせを受け、国岡商店は唯一石油の供給を拒まれてしまいました。それでも将来石油を販売できることを信じ、本業ではないラジオの修理を引き受けたり、、全国の石油タンクの底に残る泥のような石油をさらうという、他社が断る嫌な仕事も、国益のために率先して引き受ける。そしてその度に、ほとんど寝る間も惜しんで驚異的に働き、全てをやり遂げた鐵造と社員たち。

そんな中、日本を支配していたGHQで通訳を勤めていた武知という優秀な男が、国岡商店の仕事ぶりに惚れこみ、給料は安くてもいいから働かせてくれ!と頼み込んで来る。GHQとコネがある武知の働きにより、「石油統制配給会社」の嫌がらせを覆し、晴れて国岡商店は、国内で正式に石油を販売できる業者になりました。


目先の利益よりも長期的な利益を求める:


その後、世界を牛耳っていた石油メジャーが次々と日本の石油会社を買収に走る。目先の利益を考えて次々とメジャーに買収されていくその他の会社。

国岡商店にも、ある石油メジャーからの買収のオファーがあったが、、国益のため、民族系の石油会社にこだわった鐵造はそれを断固拒否。自前の巨大な石油タンカー「日承丸」を購入し、何とか自前の仕入れルートを確保して、日本中に石油の供給を続けます。

しかし、徐々にメジャー各社の陰謀から仕入れルートを絶たれ、仕入れができなくなってしまう… そこで鐵造は、唯一石油メジャーが支配していないイランから石油を輸入することを思いつきます。

当時イギリスが支配していたイランの国際情勢を考えると、船が途中で拿捕されるなど、かなりリスクが高い策でしたが、、日本の国益のためにはそれ以外の方法はありませんでした。しかし、ここでもその社員たちが「国益のため」という基本理念から、「むしろそんな重要なミッションに関われるなんて誇らしい」と、日承丸をイランへと送り込み、、見事イランとの取引を成功させました…


単なる金儲けを超えた”基本理念”のパワー


このように国岡商店は幾多の逆境を、「国益のため」という単なる金儲けを超えた基本理念を貫くことではねのけてきました。

この、単なる金儲けを超えた”基本理念”を持つこと。そして、それを社員に公言し、浸透させることは、世界的に偉大な会社として尊敬される企業のほとんどに共通していたことが「ビジョナリーカンパニー」という本の中でも明かされています。(この本は、業界内で圧倒的トップの地位を維持し、100年近くにわたって存続し続けているGreatな会社と、その業界の中でそこそこの地位を保っているGoodな会社を比較し、その違いをもたらした要素は何なのか?ということを徹底的に研究したものです。)

sigma

(株式指標を見ると、ビジョナリーカンパニーとその他の会社はこんなに違う…)

その一部を引用すると・・

”「ビジョナリーカンパニーのほとんどが、設立以来、一貫して経済上の目的を超えた基本理念を持っている。そして、ここが重要なポイントだが、ビジョナリーカンパニーでは、基本理念の力が比較対象企業よりもはるかに強い。

ビジョナリーカンパニーはもちろん利益も追求しているが、もっと広い視野に立ち、もっと意義のある理想を追求している。利益を最大限にすることを目指してはいないが、それぞれの目標を、利益を上げながら追求している。両方とも行なっているのだ。」”

”「ビジョナリーカンパニーの重要な要素は、基本理念、つまり、単なる金儲けを超えた基本的価値観と目的意識である。基本理念はすべての人々の指針となり、活力を与えるものであり、長い間ほとんど変わらない。

一言で言えば、ビジョナリーカンパニーの理念に不可欠な要素はない。私たちの調査結果によれば、理念が本物であり、企業がどこまで理念を貫き通しているかの方が、理念の内容よりも重要である。」”

”「ビジョナリーカンパニーの基本理念は、単なる美辞麗句ではなく、人々を操作したり欺くための言葉ではない。そう確信する根拠は何か?理由は2つ。第一に社会心理学の研究によると、人々はある考え方を公言するようになると、それまではそうした考え方を持っていなくても、その考え方に従って行動する傾向が際立って強くなる。つまり、基本理念を公言すること自体で、その理念に従って一貫した行動をとる傾向が強まることになる。ビジョナリーカンパニーは比較対象の企業に比べて、基本理念を公言する傾向がはるかに強い。

第二に、それ以上に重要な答えは、ビジョナリーカンパニーは理念を宣言しているだけではないことだ。その理念を組織全体に浸透させ、個々の指導者を超えたものにするための方法も取っている。」”

「ビジョナリーカンパニー 時代を超える生存の法則」より引用:

この基本理念を貫く姿勢、浸透させる努力によって、ビジョナリーカンパニーはその他の企業に比べ、カルトに近いほど強力な文化を生み出します。その結果として従業員は誇りを持ち、他者の比にならないほど働くようになったり、取引先やパートナー、顧客さえも応援してくれたり、、結果として普通ではない利益を得ることができるのです…


リッチ・シェフレンの過去


ちなみに、リッチ・シェフレンも「ビジネスにおいて自分のビジネスの目的、なぜそのビジネスを始め、何を成し遂げたいのかを知ることは本当に大切なことだ。」と言っていて、講座:ビジネス・グロース・システムの中でも基本理念や目的を考えることを、何よりも最初に据えています。

このことは、リッチ自身の経験から来ていて、彼は過去に催眠療法のビジネスを手掛け、全米最大のチェーンへと育て上げました。その催眠療法ビジネスで見込み客が望んでいたのは、ラクして体重を減らすこと。

そのため、催眠をダイエットのための商品として売り出し、大ヒットしたのですが、、ある研究機関の調査によると、市場に出ているダイエット商品全般にの減量成功率は、たったの6%。(言い換えると、94%が失敗に終わっているということです。)

お客さんが欲しがる魔法の薬を売ったほうがお金は儲かるけれど、、それは本当にお客さんのためにはならない。そんな罪悪感から、リッチはだんだんとお客さんに会うのが怖くなっている自分の状態に気づき、催眠療法ビジネスからは手を引いたそうです。

そして、現在ではインターネット・マーケティングの世界で、お客さんが欲しがる”スグに儲かる方法”といった魔法の薬は提供せず、インターネット起業家が、本物の成果を上げ続けるために必要な本質的な知識・トレーニングを提供し、彼らの自立をサポートする。という理念の元に活動しています。

それにより、リッチやその社員たちは驚くほど誇りを持つことができ、自信を持って、ビジネスをすることができるようになったそうです。そのことが結果的にサービスの質を上げ、評判を呼び、、さらなる収益を呼び込むきっかけになっています…


基本理念を作るためのヒント


この「基本理念」というのは、今すぐとか、今週中に作れるようなレベルのものではなく、常に考え続けなくてはならないものですが、、その定義と、それを作るために参考にできる質問をご紹介しておきます。

基本理念の定義:基本理念=基本的価値観+目的

基本的価値観=組織にとって不可欠で不変の主義。これはいくつかの一般的な指導原理からなり、文化や経営手法と混同してはならない。そして、利益の追求や目先の事情のために曲げてはいけないもの。

目的=単なる金儲けを超えた会社の根本的な存在理由。地平線の上に永遠に輝き続ける道しるべとなる星であり、個々の目標や事業戦略と混同してはならない。

医薬品業界のビジョナリーカンパニー「メルク」の基本理念の例:
「医薬品は患者のためにあることを忘れない。医薬品は人々のためにあることを、絶対に忘れてはならない。医薬品は利益のためにあるのではない。利益はあとからついてくるものであり、我々がこの点を忘れなければ、利益は必ずついてくる。このことを肝に銘じていればいるほど、利益は大きくなる。」

「ビジョナリーカンパニー 時代を超える生存の法則」より一部引用:

ちなみに、ビジョナリーカンパニーの持つ「基本的価値観」は大抵3?6個と言われていて、それ以上持っている会社はないそうです。ここでのポイントは、もしあなたが基本的価値観をリストアップしていて、6個以上候補が出てくるようなら、以下の質問をして選定することです。それが、、

質問:
・これらの価値観のうち、外部環境が変わっても、たとえ、これらの価値観が利益に結びつかなくなり、逆に、それによって不利益を被るようになったとしても、、100年間にわたって守り続けていくべきものはどれか?

・逆に、これらの価値観を掲げていては、不利になる環境になった場合に、変更でき、捨て去れるものはどれか?

このように考えていくと、あなたの会社にとって、どれが本物の基本的価値観なのかを見極めるのに役立つそうです。これはもちろん会社だけでなく、個人にも応用できるものですので、ぜひ、あなたも基本理念を考えてみてはいかがでしょうか?

萩原 敬大

PS.
映画:「海賊と呼ばれた男」は、小説と比べると、個々のキャラクターの背景が割愛されてしまっているので残念ですが、、結構泣けるシーンが凝縮されていて、僕は7回泣きました。(笑) 起業家にはぜひオススメしたい作品です。

4:4

萩原 敬大
萩原 敬大

Strategic Profits マーケティングマネージャー
メールマガジン購読者数41,238人(2017年1月5日時点)日本におけるリッチ・シェフレンの独占販売権を持つ【Strategic Profits】のマーケティングマネージャー兼セールスライター。販売プロモーションの企画、広告運用、セールスコピーのライティングなどを統括している。

萩原 敬大の記事一覧

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

【STRATEGIC PROFITS】の最新記事をお届けします