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ハリウッド映画はどこで儲けているのか?

2017.1.21 | ,
From:萩原 敬大(はぎわら たかひろ)

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この写真は、去年行ったスター・ウォーズ展で撮ったもの。ライトセーバーや実物大のストームトルーパー、ダース・ベイダーのマスクなどがあって、ファンにはたまらない展示でした… この作品が大好きな人は多いと思いますが、、実は原作者であり、監督のジョージ・ルーカスは”超やり手のビジネスマン”だったということを、あなたは知っていましたか?

彼が「スター・ウォーズ」を世に送り出す時にとったある手法を、うまく応用することができれば、起業家のあなたにとって思わぬブレイクスルーになるかもしれません…

 

ハリウッド映画はどのように儲けているのか?


 

去年の12月頃から、自社のビジネスモデルについて考えていた時、とても素晴らしい本に出会いました。それが、、「ビジネスモデル思考法」という本で、個人的には去年読んだ本の中でもトップ5に入るくらい面白かったです。

ビジネスモデルや利益モデルのフレームワークを、様々な企業の事例を用いてストーリー仕立てで解説していくのですが、難しい概念を小学生でも理解できるくらい分かりやすく解説されていて、、感動しました。そして、その中で出てきたのが、今日取り上げる「ハリウッド映画はどのように儲けているのか?」という事例です。

昔、ハリウッド映画は劇場での興行収入で儲けるビジネスモデルでしたが、、今ではハリウッド映画の中でも、興行収入だけで制作費を賄えるのは5本に1本ほどしかないそうです。そこで、DVDやテレビ、グッズなどのライセンスによる収入で制作費を賄うわけですが、、この利益モデルを最初に作り上げた人は、実は当時新人監督だった、若き日のジョージ・ルーカスなのです…

 

やり手ビジネスマン”ジョージ・ルーカスのアイディア


 

「スター・ウォーズ」の1作目の配給会社は20世紀FOXでしたが、SF映画というのは制作費がかさむので、新人の無名監督であるジョージ・ルーカスに制作させることは、当然ながら非常にリスクが高いと渋りました。しかし、そこでルーカスが提示したのは…「劇場での興行収入はいらない」という驚きの条件でした。

それを聞いた20世紀FOXは、興行収入目当てに多くの映画館で「スター・ウォーズ」を公開することにしました。ここまでだと、たくさんの人が映画を観るチャンスはありますが、結局ルーカスには1円も入りません。そこで、彼は何をしたか?

彼がしたことは、映画に関連するグッズの販売権利を全て取得する。ということ。これは過去に例がないことだったので、20世紀FOXはグッズがそんなに売れるとは思っていませんでした。20世紀FOXはあっさりそれを許可しましたが、結果的に映画はメガヒット。全6部作を合わせて150億ドル(1,7兆円)もの収入をルーカスは手にしました。(ちなみに劇場での興行収入は全6部作を合わせても45億ドル(5,166億円)だそうです。)

 

「ソリューションの真空地帯」を満たす


 

ここでルーカスが考えていた優れた利益モデルについて、この「ビジネスモデル思考法」という本の中で分析されている部分を引用させていただきます。

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”「映画監督であり、製作者であるルーカスが映画そのものに関する収益を放棄したんです。とにかく、彼の映画が映画館で流れることが重要だったのです。映画を犠牲にして、そのあとの収入を待つ、あるいはそのあとのソリューション(製品)で顧客満足を作ることに決めたわけです。」


「映画を見て感動したら、絶対にその世界観に浸りたくなるものです。特に少年たちはおもちゃを欲しがります。しかし、それを当時、一気通貫でやっている製作者もいなかったのでしょう。作品に心を動かされたのに、家に持って帰って遊ぶようなおもちゃというソリューションがないことが、マニアのルーカスにとっては問題だったのではないでしょうか。つまり、「ソリューションの真空地帯」がそこにあったことに気づいたわけです。」

「活動チェーンは「映画を見てスカッ」として終わりではなく、そのあとにファンになることがわかっていたのです。最後はマニアになるまでに、そこにソリューションが必ず必要になるだろうと。そこで課金する方が利益が大きいと踏んだわけです。」”
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「ビジネスモデル思考法」 川上 昌直 著より引用:

著作権の関係もあり図を載せられないのがすごく残念なのですが、著者の川上教授が提唱している顧客の「活動チェーン」と、どこで課金をするかという「ビジネスモデルカバレッジ」というフレームワークはとても秀逸です。

ざっくりとだけ説明すると、映画を見に来る顧客には、、

顧客の購入ステージ(どの映画を観ようか決めて、お金を払ってチケットを買う)
?顧客の用事解決ステージ(映画を観て感動し、日常へと戻る)
?顧客の継続ステージ(ファンになる、世界観に浸る、また次の作品を観る)

この3つのステージがあります。

で、今までの映画業界の常識では、?顧客の購入ステージ(映画を観るためにお金を払う。)という部分でしか課金をしていませんでした。しかし、誰よりも顧客の気持ちがわかっていたルーカスは、映画を観たらファンになり、グッズが欲しくなるだろう…というニーズ。いわば、この本で紹介されている「ソリューションの真空地帯」が存在すると考えて、?の顧客の継続ステージに課金ポイントを用意したことで成功したのです。

そして、現在ではこれがハリウッドの主流ビジネスモデルになっていて、、(ディズニーなどは代表的な例ですが)もはや映画はキャラクターを売るための”フロントエンド”のようなもので、キャラクターや漫画、アニメ、サウンドトラックなど、あらゆる”バックエンド”で利益をとる。お客はそれを買えば買うほど世界観にハマっていき、次回作も見たくなる…そんな利益モデルになっているそうです...

 

リッチ・シェフレンの優れた利益モデル


 

また、リッチ・シェフレンもこの点については、とても優れたモデルを作り上げています。これは「ビジネスブループリント」の中で全て網羅されているのですが、ここで少しだけご紹介しますね。

リッチが経営する、米国 Strategic Profits社の利益モデルは「ファウンダーズクラブ」という月額47ドルの継続課金のコーチングプログラムをメインにしたもの。フロントエンドとして販売する商品に、必ず「ファウンダーズクラブ」がセットになっているというシンプルなものですが、その課金戦略がとても優れています…

ちなみに軽く背景情報を話すと、米国は国土が広いので、日本の比ではないくらいにインターネットビジネスが盛んです。そのため、メインの販売チャネルになるのがアフィリエイトによる紹介。この「ファウンダーズクラブ」もアフィリエイトを中心に販売していて、アフィリエイターが紹介してくれたら、その時点で1ヶ月目の売上の100%を報酬として支払います。

しかし、ユニークなのはここから。普通のアフィリエイトならこれで終わりなのですが、リッチの場合、紹介したお客さんが1ヶ月継続するたび、その継続収入の25%をアフィリエイターに提供するという仕組みを取っています。

しかも、「ファウンダーズクラブ」のクオリティは高く、平均会員定着率は業界標準の3倍以上長いため、アフィリエイターは一生懸命売ってくれて、さらに会員が増えていく。というわけです。

先ほどの「活動チェーン」の例でいくと、リッチは、この「ファウンダーズクラブ」ではほとんど利益を取らず、そのクラブの中で、最高の情報・ビジネスアイディアを伝えることで、顧客をファンにし、世界観へと引き込みます。そして、?顧客の継続ステージに「もっと他の商品も欲しい!」という”ソリューションの真空地帯”ができたところで、より高額なバックエンド商品を用意して、一気に利益を回収する。ということです。

商品の質が高い。というのがもちろん大前提にはなりますが、このような利益モデルを取っているライバルはほとんどいないので、リッチはあまり苦労することなく、大きな利益を得続けることができるのです。

 

見落としていたチャンスはない?


 

いかがでしょうか? いわゆるフロントエンド、バックエンドというのはDRMの基本中の基本なので考えたことのある方は多いでしょうが、「顧客の活動ステージ」といったフレームワークに当てはめてみることで、今まで見落としていたチャンスに気づくことができます。

あなたの商品が提供する”ソリューションの真空地帯”は他にないでしょうか? そして、課金ポイントをあえてずらすことで、今よりも大きな利益を取れる可能性はないでしょうか? これは時間をかけてでも答えを出す価値のある質問だと思いますよ。

萩原 敬大

PS.
今、スター・ウォーズの最新作となる8が制作されているようですが、、個人的にはエピソード3あたりが好きです。将来を嘱望されていた、才能あふれる主人公:アナキン・スカイウォーカーが、悪の世界のボス ダース・シディアスに言葉巧みに説得され、ダークサイドへと引き込まれていく… 人間心理のスキマを突いた、微妙な駆け引きがすごく面白いです。こちらもマーケターにはオススメします。



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萩原 敬大
萩原 敬大

Strategic Profits マーケティングマネージャー
メールマガジン購読者数41,238人(2017年1月5日時点)日本におけるリッチ・シェフレンの独占販売権を持つ【Strategic Profits】のマーケティングマネージャー兼セールスライター。販売プロモーションの企画、広告運用、セールスコピーのライティングなどを統括している。

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