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人気の”観光地”に学ぶ「ポジショニング戦略」

2017.3.4 | ,
From:萩原敬大(はぎわらたかひろ)

”「ビジネスで重要なのは、人の頭の中に「最初に」入っていくことである。そして、消費者の頭の中に、消えないメッセージを刻み込むために最初に考えるべきことは、メッセージの内容ではない。消費者の頭の中の状態だ。」”

世界中で35年以上読み継がれるマーケターのバイブル:「ポジショニング戦略」の著者 アル・ライズはこう言いました。

今日は、この「ポジショニング戦略」の中に出てくる、ヨーロッパの小国に過ぎない”ベルギー”を、どうしたら人気の観光地に位置付けることができるか? という事例の解説を通して、、恵まれた資源を持たない、われわれのような中小企業・起業家が、市場でトップのポジションを狙うための”3つのポイント”をお伝えします。

 

ヨーロッパの小国「ベルギー」をポジショニングせよ


 

この本の事例に出てくるのは”サベナ航空”という航空会社。サベナは、ベルギー国内では圧倒的な首位を誇る航空会社ですが、乗客数が少ないことに悩みを抱えていました。

なぜなら、、そもそもベルギーは小さな国なので、北大西洋線の全乗客のうち、ベルギーに降り立つ人は、わずか2%しかいなかったからです。また、「観光客が行きたい国ランキング」でも、ベルギーはいつも最下位レベルと、サベナはまさにパッとした資源も、知名度も、予算もない状態でした。

このような状況にも関わらず、サベナが当時やっていた戦略というのは、多くの航空会社がやっているのと”同じように”、フードとサービスの良さを売り物にしていました。ですが、、いくら食事が素晴らしくても、サービスが良くても、ベルギーに行きたくなければ意味がないのです…

 

POINT①:競合と同じところで勝負してはいけない


 

これが1つ目のポイントです。リッチのナビゲーターを務め、これまで690社以上の会社にアドバイスをしてきた中谷さんは、たいていの会社もこのサベナと同じように、競合をリサーチするというより、単に”競合を意識”して、同じことをやって相手に勝とうとする。そんなふうに言っていました。

特によくある間違いが”価格”です。「競合はこのくらいの値段でやっているから、うちもこれくらいで…」 「競合がうちの価格を検索して、調べてくるから面倒なんですよ。」中谷さんは、セミナーなどでお客さんからこのような言葉を聞くことがかなり多いと言います。

しかし、競合の強みはもしかしたら”価格”で市場を圧倒することかもしれませんが、もしあなたがジャブジャブ使えるような資金力がないなら、、そこで勝負をするのはかなり危険です。ちなみに「ポジショニング戦略」の著者はこのように言っています…

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”「マーケティングにおいて、ライバルとの直接対決は問題を招くだけである。
障害は乗り越えるのではなく迂回すること。いったん後退し、まだ誰も手にしていないポジションを掴み取るのだ。」”
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「ポジショニング戦略」アル・ライズより引用:

そこで重要になるのが、自社の独自の”強み”に基づいて、小さなカテゴリでも1位を取れるポジションを探すこと。できるだけ見込み客に忘れられることのない、ユニークなポジションを取ることです。
(参考:「小さな会社のための勝てるニッチの作り方」)

話を本題に戻しますが、、この時”サベナ”にとって有効だったのは、自社ではなく、ベルギーという国自体をポジショニングすることでした。(これは発着地が限られる航空会社特有のやり方なので、ちょっと特殊かもしれませんが、、)

 

成功している国や都市の共通点


 

そこで、サベナは成功している国や都市と、ベルギーを比べてみたところ、”強烈なイメージ”が欠如していることに気づきました。確かに僕らがベルギーと聞いても、多分”ワッフル”くらいしか出てこないですよね…(笑)

一方で、イギリスならビッグベンやロンドンの時計塔が思い浮かびますし、イタリアならコロッセオやバチカン、ピサの斜塔、世界的な美術館など、、強烈な個性があります。フランスはフランス料理、エッフェル塔。オランダならアムステルダムのチューリップ、美しい運河や風車。ニューヨークなら摩天楼や自由の女神・・などなど、たいてい”絵ハガキ”になるようなイメージを持つ国が観光誘致では有利になっていることに気が付いたそうです…

 

POINT②:”強み”は自分じゃわからない


 

このように、自分だけではなく、ライバルを考えてみると、彼らがどんな強みを持っているのか? そして、どんなアプローチで観光客を引き寄せているのかがわかります。さらに、ここでの大事なポイントは「住人と観光客では視点が全く異なる」ということ。

ニューヨークに住んでいる人の多くが、ただの空気の悪い高層ビル街としか思わない風景も、ただの銅像も、、それを一目見ようと押し寄せる年間1600万人の観光客から見たら、それは”ニューヨークの摩天楼”であり、”自由の女神像”なのです。

同じように、自分の会社の”強み”というのは、社長や社員の立場から見ているだけでは、おそらくわかりません。当たり前のことを当たり前にやっているだけ。見慣れているので、特に何が変わっているのかはわからないからです。

 

また、もう1つのポイントは”お客さん”の頭の中を探ることです。


 

サベナ航空がさらに細かく見ていくと、初めてヨーロッパに来る人は、たいていロンドン、パリ、ローマなどの分かりやすい観光地に行きたがります。一方で、、ベテランのヨーロッパ旅行者にとってベルギーは、実は、趣深い都市、歴史に溢れる宮殿や博物館、美術館が点在する、”見所の多い美しい国”という風に考えられていたことがわかりました。

このように、誰が本当のターゲットになるのか?あなたのことを本当に気に入ってくれているお客さんは誰か?を特定することで、あなたの”強み”の手がかりが見えてきます。

もちろん、強みを見つけるのはそうそう簡単なことではないですし、お客さんが答えを教えてくれることはありません。ライバルとの比較、お客さんの頭の中を探ることによって、それらしい手がかりを見つけていきます。リッチがよくいう例えだと、テレビドラマの犯罪捜査官のようなイメージですね。ちょっとした手がかりを拾い集め、「これじゃないか?」と、あたりをつけていきます…

 

リサーチから見つかった”意外”な強み


 

また、話をサベナ航空に戻すと、、ベテランのヨーロッパ旅行者が「美しい国」という印象を持っていることがわかりました。これは手がかりになります。でも、単に美しいだけでは観光客を惹きつけられません…少なくとも数日は滞在してもらえるくらいのネタがないと、観光都市として、他の魅力あるヨーロッパの国に勝つことは難しいのです。

そこで、サベナ航空がリサーチを続けたところ、レストランなどのガイドブックを出している”ミシュラン”にヒントを見つけました。(どうやらミシュランは、都市の観光ガイドも出しているらしいです。)

ミシュランの「ベネルクス3国用ガイドブック」には、特に訪れる価値のある3つ星都市は全部で6つあり、なんとそのうちの5都市がベルギーだったのです。(ベネルクス3国というのは、ベルギー、オランダ、ルクセンブルクですね。)一方で観光都市として人気のあったオランダのうち、ここにランクインしていたのは”アムステルダム”ただ1つでした。そこで、この事実から生まれた素晴らしい広告が…

 

POINT③:すでにお客さんの関心を掴んでいることと結びつける


 

”「ベルギーには、アムステルダム5個分の魅力があります」”というものでした。ヨーロッパ全体という広いくくりではなく、ベネルクス3国、さらに隣のオランダとの比較を使ったことで、ベルギーの強み・ポジションが際立ちました。

この広告によって、今まで通り過ぎるだけだったベルギーへの問い合わせが殺到。オランダの観光大臣が怒り狂って電話をかけてくるほどだったそうです。笑

ここでのポイントになるのが、やはりお客さんの頭の中から始めるということ。すでにお客さんの頭の中で人気の観光都市となっている”オランダのアムステルダム”に、ベルギーという地味な国を結びつけたこと。ポジショニング戦略においては、全くお客さんの頭にない新しいものではなく、新しいけれど、既存の強力なコンセプトに引き寄せることで、その成果を格段に大きくすることができます。

ただし、、注意点がひとつ
このベルギーの広告キャンペーンは、その後テレビCMにも展開され、大人気を博したそうですが、その後しばらくして、ぱったりと聞かなくなってしまったそうです。なぜなら、、サベナ航空の新経営陣がこの広告に飽きてしまい、せっかくうまくいっているにもかかわらず、展開するのをやめてしまったからです。このことについて、著者はこのように言っています…

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”「ポジショニングとは累積的なコンセプトである。長期的に広告し続けてこそ効果が出る。何年間も同じことにこだわり続けなければ意味がない。成功している企業は勝ちパターンを変えない。消費者の頭の中にポジションを築くことは、価値の高い土地を手に入れるのに似ている。一度手放したら、二度と取り戻せない。」”
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「ポジショニング戦略」アル・ライズより引用:

サベナのように、一度”強み”や、それに基づく強いポジションを確立したら、うまくいっている間はそれを変えてはダメですし、全然強みと関係のないことをやってはいけないのです。ただ、やはり社長というのはアイデアマンですし、行動力もあるので、、その欲を我慢しないといけないというのがツライところ。なので、、ここは気をつけないといけないところです。

 

まとめると、、


 

サベナ航空の事例から学べる、恵まれた資源を持たない、多くの中小企業・起業家が、市場でトップのポジションを狙うための”3つのポイント”は・・

POINT①:競合と同じところで勝負してはいけない
POINT②:”強み”は自分じゃわからない
POINT③:すでにお客さんの関心を掴んでいることと結びつける
おまけ:うまくいっている間は、その強み・ポジションにこだわること


こちらです。ぜひ、あなたも参考にしていただければ幸いです。

萩原敬大


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萩原 敬大
萩原 敬大

Strategic Profits マーケティングマネージャー
メールマガジン購読者数41,238人(2017年1月5日時点)日本におけるリッチ・シェフレンの独占販売権を持つ【Strategic Profits】のマーケティングマネージャー兼セールスライター。販売プロモーションの企画、広告運用、セールスコピーのライティングなどを統括している。

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