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”獺祭”バカ売れの裏にある意外な理由

From:萩原 敬大(はぎわら たかひろ)

先週の日曜、人気の日本酒「獺祭」のドキュメンタリー番組を見ました。製造元の旭酒造という会社は、山口県の岩国市から電車で40分。さらにそこからタクシーで15分と…辺鄙な山奥にある小さな酒造です。

でも、アルコール全体が売れなくなってきている逆境の中で、ここの「獺祭」はバカ売れしています。そもそも、なぜこんなにブームになったのか? 他の日本酒とは何が違うのか?

ドキュメンタリーの中で語られていた内容に、その違いを生み出す”1つのポイント”がありました。このポイントは、われわれのような中小企業、起業家にとってめちゃくちゃ重要な内容なので、、今回ご紹介します。それではいきます…

 

日本酒の常識を覆した酒


 

ポイントをご紹介する前に、、もしかしたら知らない人もいると思うので、「獺祭」についての背景を少し話します。この獺祭は、「日本酒の常識を覆した酒」とも言われるほど、ありとあらゆる業界の慣習を打ち破って、売れまくっている商品です。

まず、日本酒の従来からのお客を追いかけることなく、「日本酒を飲んだことのない人、嫌いな人を顧客にしたい」という方針のもとに、アルコール離れの激しい若者や女性層に受け入れられてきました。

今、日本酒の市場というのは、業界全体で見ると完全に右肩下がり。この35年間でほぼ3分の1に激減しています。そして、、かつて全国に3000以上あった酒蔵も、今や約1500に半減してしまったと言われています…
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出店:nippon.com の記事:図1を転載)
そんな状況の中、獺祭はこのグラフの通り、2005年あたりから異常なほどの伸びを見せ、2012年に25億円だった売上高も、2015年には65億円(経常利益21億円)と3年で3倍近くに伸びています。さらに、海外での日本食ブームを見据えた世界展開も視野に入れていて、すでに進出先は18カ国。売り上げの約1割を海外が占めているそうです。

などなど、、今では衰退する業界で一人勝ち状態。順風満帆の旭酒造ですが、、元々は倒産寸前に喘ぐ零細酒造だったんです…

 

新規事業に失敗、2億円の損失を抱える…


 

これまで詳しくは知らなかったんですが、日本酒造りというのは、いわゆる昔ながらの酒蔵で「杜氏」と呼ばれる責任者に任されていることがほとんど。たいていベテランの男性が杜氏を勤めていて、製造に関するすべての権限と責任を持ち、蔵元は販売に専念するという分業体制が敷かれているそうです。

もちろん、そのような慣習があるため、旭酒造も最初は同じように杜氏に任せた酒造りをしていました。しかし「日本酒は冬に作るもの。」という常識があるため、冬の間にしか仕込みができない(つまり製造量が限定される)体制をどうにかしようと、社長の独断で、夏にも作れる地ビールの醸造と、レストラン経営という新規事業を始めることになりました。

が、、これが全くうまくいかず、わずか3ヵ月で2億円の損失を出すことになります… 旭酒造の経営危機の噂を聞きつけた杜氏は、「もう旭酒造では酒造りをしたくない。」と、突然いなくなってしまいます。

酒造りのノウハウがほとんどない中、膨らんでいく赤字… 追い詰められた社長は、、「杜氏に頼らずに、自分たちだけで日本酒を作ろう」という苦渋の決断を下すこととなりました。(図らずも、これこそが、のちに獺祭というヒット商品を生むイノベーションのきっかけになるのですが…)

 

杜氏の経験と勘に頼る酒作り
VS
”教科書通り”の基本に忠実な酒作り


 

杜氏に頼った酒造りというのは、業界ではごくごく当たり前のことなのですが、、実はこれにはデメリットも数多くありました。例えば、、全てが杜氏の経験と勘に依存するので、全くもってコントロールが効きませんし、予測がつきません。品質にもムラが出ますし、生産量も一定量以上は増やせません。なぜなら、労働量の限界があるからです。

また、お客さんの意見を反映して、「こういう酒が作りたい。」と提言しても、職人気質の杜氏はなかなか聞く耳を持ちません。彼らは冬の間だけ働く、いわば季節労働者と同じですし、製造だけを請け負っています。結果、作ったらあとはよろしく。というばかりで、販売には関わっていないので、彼らにとってはそれが売れるとか、売れないということは、あまり関係がないのです。

そういった面からすると、これまでにない新しい日本酒を作りたい。今まで開拓出来なかった層にもアピールできる日本酒を作りたい。そんなビジョンを持っていた旭酒造の桜井社長にとっては、杜氏がいなくなったことは、逆に都合がいいことでもありました。

 

徹底したマニュアル化と、数値化による品質管理


 

そこから、桜井社長と通年勤務の社員による、杜氏に頼らない酒造りが始まったのですが、、まず行ったのは、杜氏のようなベテランの経験や勘がない中で、日本酒を”教科書通り”に基本に忠実に作ること。とにかく徹底したマニュアル化と、数値化による品質管理を進めていきました。

すると・・これが面白いところなんですが、何年か後には、全員素人にもかかわらず、なんと杜氏よりも美味い酒が作れるようになっていました。

しかも、さらに素晴らしいことに、、日本酒造りはとてもデリケートなのですが、徹底した数値管理、時間管理、空調や温度の管理をマニュアルにしていたおかげで、入社数ヶ月の新人であっても、パートさんでも、誰でも酒造りができるようになったことです。(その証拠に、旭酒造の醸造責任者の年齢は30代前半。全社員の平均年齢は27.6歳と、めちゃくちゃ若いです。) *旭酒造新卒採用ページ調べ

さらに、このようなマニュアルができて、杜氏に頼らなくて良くなったおかげで、他の多くの酒造と違い、冬しか酒は作れない。なんてことはなくなりました。1年を通じて酒を造る「四季醸造」ができるようになったことで、生産能力は大幅に増強。お客さんの注文にもリアルタイムで応えられますし、マーケティングを反映した酒造りなど、商品の改善も容易にできるようになり、業績は大幅に伸びていきました…

 

社長の中にある”システム”を外に出す


 

この旭酒造の話から学べるポイントは、杜氏(社長)の勘や経験といった曖昧なものに頼るのではなく、社長の頭の中にある長年の経験や勘(つまりシステム)を、しっかりと外に出して、誰でもできるようにする。ということの重要性です。

リッチがよく引用する話で、日本における品質管理の父と呼ばれたエドワーズ・デミング博士の言葉があります。それが、、

”「自分のしていることを、ひとつのプロセスとして説明できないなら、それは自分のしていることが分かっていないということだ。」”

というものです。リッチも、20代で服飾店のビジネスをしている頃は、自分のビジネスにシステムという考え方を全く導入しておらず、すべて直感で運営していたそうです。
小さいうちはまだ良かったのですが、ビジネスが少しうまく行き始めると、もっと人手が必要になり人を雇ったところ、、リッチは自分の失敗に気づきました…

当時のリッチは、仕事の進め方について、スタッフに一切説明できなかったのです。新しいスタッフはリッチの頭の中を覗くこともできませんし、リッチと同じように直感で正しい判断ができるわけがありません。そうなると、結局リッチがずっと側について、ああだこうだと教え込まなくてはいけません。

「なんでこんなこともできないんだ!」と、イライラすることもあるでしょう。いつも自分が新人スタッフの尻拭いをして、、代わりに仕事を片付けてあげて、、と、気づけば今まで以上に仕事が増えて忙しくなるばかり。自分がいないと回らない。自分が倒れたらゲームオーバー… これこそがまさに、あなたがビジネスの中心に居続けてしまう原因になります…
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もちろん、こうなると、社長が本来やるべき仕事に集中できないので、ビジネスは一向に伸びていきません。常に自分がビジネスの”足かせ”になってしまうのです。

しかし、逆に先ほどの旭酒造の例のように、ここをしっかりとシステム化し、プロセスをマニュアルに落としておけば、、あなたがビジネスから自由になれるだけでなく、ビジネスをもっと大きく拡張することができますし、改善して、より良いものにしていくことができます。

 

ビジネスをシステム化するための最初のStep


 

これを聞いたとき、マネージャーとして、正直個人的には耳が痛い部分がありました。そこで思い出したのが、リッチのこの言葉・・”「自分がいなければ回らないビジネスをしているのは無責任だ。」”です。それを踏まえた上で、、システム化するための最初のステップはこれです。

 

Step1.「俺がいないとダメなんや」を捨てること


これは俺にしかできない仕事だ。うちのチーム・会社には俺がいないとダメなんや。そんな風に感じるのは自己重要感が高まりますし、気持ちがいいことですが、、やはりここへの執着を捨てないと、一生自分に依存したビジネスから抜け出すことができません。

その結果、自分が事故にあって動けなくなったら、自分に万が一のことがあったら、、会社や家族の生活はどうなるんでしょうか? そう考えると、自分に依存するビジネスを作るというのは、最高の責任の取り方ではありませんし、決してかっこいいことではなく、逆に無責任とも言えますよね。マインドセット的な話ですが、まずはこれが第一です。

Step2.「ビジネスはシステム」と認識すること


リッチが言う通り、すべてのビジネス=システムである。そして、システムというのは、さらに小さなシステムの集合体で、その小さなシステムはさらに細かいプロセスやタスクが集まって構成されています。なので、あなたがしているどんな些細な仕事であっても、それはすべて↓のような構成になっているということを認識することです。
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そして、基本的に小さな会社の社長・起業家の方であれば、、「すべてのシステムはあなたの頭の中にある」という状態だと思います。なので、ビジネスが成長するにつれ、そのシステム、つまり責任をどんどん自分の外へと移譲していかないとビジネスは伸びていかないということです。そこでStep3は、、

Step3.実際の業務をプロセスとして把握する


ということです。ここでは、あなたのやっている業務の全体像、細かい仕事のプロセスを全て紙に書き出していきます。その進め方、必要な資源、かかる時間など、、なんとなく勘や経験に頼ってやっていたことを、細かいプロセスとして把握します。

これがマニュアルにできたら、なお良いですね。(僕たちダイレクト出版では、どんな業務でもマニュアル化した人は評価される文化ができているので、セールスレター、メルマガ、細かい業務のことまで、多岐にわたるマニュアルが豊富にあります。)

Step4.人に委任する


あなたがやっていることをプロセスとして把握し、システムとして外に出したら、あとはその仕事を部下に委任していきます。(もちろん、アウトソーシングでもいいでしょう。)逐一細かく説明しなくても、他の人が仕事を進められるようになったらベストです。社長のあなたが本当にやるべき重要な仕事だけを残して、他のものはすべて委任してしまいましょう。

そのほかにも、、メトリクス(数値基準)を作るとか、もっと気をつけるべきことがありますが、ざっくりいうとこのようなStepで、あなたの仕事をシステム化していくことができます。

正直、これを実行するのは大変ですし、自己重要感を捨てないといけないので、最初は気分は良くないと思います。でも、これをやらなければ、一向にビジネスのすべてのタスクはあなたに依存したまま、状況が改善することはないでしょう…

でも、今回お話しした「獺祭」の旭酒造の事例のように、ビジネスをしっかりとシステム化し、改善を繰り返していくことができれば、、あなたは計り知れないほどのメリットを手にすることができるでしょう。

萩原 敬大

PS.
このようにシステム化について振り返ってみて思うのですが、、やはりリッチの開発した「ビジネス・グロース・システム」はすごいです…

ビジネスのシステム化の仕方はもちろん、それをどのようにアウトソーシングするか、プロジェクトをマネジメントするにはどうしたらいいか、、あなたがいなくても一定の品質を保つためのメトリクス(数値基準)の作り方とか、採用とか、本当に全てのステップが網羅されています。何十年もビジネスをやってきた方がご参加されて、驚くのも無理はないなと改めて思いました。もしあなたも機会があれば、トライしてみてくださいね。

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萩原 敬大
萩原 敬大

Strategic Profits マーケティングマネージャー
メールマガジン購読者数41,238人(2017年1月5日時点)日本におけるリッチ・シェフレンの独占販売権を持つ【Strategic Profits】のマーケティングマネージャー兼セールスライター。販売プロモーションの企画、広告運用、セールスコピーのライティングなどを統括している。

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