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説得せずにお客を説得する方法

2016.11.19 | ,
From:萩原敬大(はぎわらたかひろ)

今日は、僕たち人間の脳に備わっている、無意識の行動を左右する”あるメカニズム”について紹介します。もしあなたがこの内容を知れば、お客さんを頑張って説得したり、何とかして考えを変えようとしなくても、、あなたの思い通りの行動をとらせることもできてしまうでしょう…ちなみにこれ結構強力なので、変なことには使わないでくださいね。笑



それではまず初めに、僕が先日経験した、あるホテルでのエピソードから話します…

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先日、某ホテルのビュッフェに行きました。そこは、目の前で焼いてくれるステーキや、ローストビーフがメインだったので、もちろんそれが一番の狙い。(実際、こういうビュッフェで原価が一番高いのは肉料理と言われてますしね。笑)

入り口で迷わず大きい方のお皿をもらって、料理を取り始めます。すると入り口のところにはサラダとか、軽いおつまみのような前菜が、何十種類も並んでいます。その次には、ピザやパスタ、定番のカレーまで。。

「うーん、これ美味そう。いやこれも、、」と、ついつい目移りして、片っ端からとっていくと、、気づけばメインの肉が乗る場所がほとんどありません。。結局、ほんのちょこっと肉をもらって席に戻ったのですが、それだけでかなりお腹いっぱいになってしまい、期待していたほど食べられませんでした…

「元を取るぞー!」と、気合を入れて行ったのに、実際に行ってみるとお目当てのものを食べる前に、案外すぐにお腹いっぱいになってしまった。。こういう経験って、あなたにもありませんか?いったいこれってなぜなんでしょう?...実は、これは偶然ではなく、その裏側には、人間の脳や潜在意識の仕組みを巧妙に利用したやり方があったことが、先週ある本を読んでいてわかりました…


ビュッフェでの行動を左右していた”脳のメカニズム”


その本というのが、「潜在意識マーケティング6つの心理戦略」という、ユニリーバなどの大手企業で25年以上マーケティングの実務をし、その後大学教授などと連携して、マーケティングをひたすら科学的に研究し続けている著者が書いた本です。

この本はリッチも推薦していて・・・”「これは、マーケティングの持つ側面や特徴について素晴らしい洞察力を与えてくれるもので、マーケッターとして成功するためには必須の内容だと思います。ある意味、この本さえ読んでおけば、人が無意識のうちにどのような価値を判断するメカニズムの調査や研究については、他で学ぶ必要がなくなるとも言えます。」”とまで言っていたので、早速読んでみたんですが、、ちょうどそこに僕のビュッフェでの失敗と重なる、ある学生食堂での実験が紹介されていました…

ちなみに、先に言っておくと、、ビュッフェの場合は、店側ができるだけ原価率を低く抑えたいという意図がありましたが、この学食の場合は学校側が、学生たちに健康的な食事をとってもらいたいという狙いなので、そこは違いますが、、本質は同じです。


学生たちの行動をいとも簡単に変えた”意外な方法”


アメリカのとある大学の学長が、学生の健康を心配し、彼らの食習慣を改善してカロリー摂取量を減らしたいと考えました。そして、まず大学側は「広告」によるキャンペーンを行い、学生に健康的な食事の大切さを知らせたり、、過剰なカロリー摂取の危険性について理解を深めてもらおうと、様々なデータや証拠を出して説得しようとしました。

ただし、結果的にこの方法では、学生たちは高カロリーな食品への考え方は変わり、健康的な食事をしようと心がけるようにはなるんですが、、結局、実際の行動の変化はほとんど見られず失敗に終わりました。

まあこれは誰にでも身に覚えがありますよね。ダイエットの必要性はわかる、運動が必要なのもわかる。食べちゃいけないもの、食べなきゃいけないものもわかる。でも、、わかってはいても、体がついていかない、、という感じです。禁煙なんかも一緒かもしれませんね。

そこで次に大学側がとった方法は、学生食堂で健康的なメニューだけを提供するというもの。ある意味これは強制に近いやり方ですが、結局これもうまくいきませんでした。。このやり方だと、学食以外での不健康な食事は禁止できないので、学生たちは近所にあるファーストフード店やコンビニに行ってしまいます。禁止されると逆に欲しくなる、反発したくなるというのも人間心理の基本ですよね。

そこで、、消費者行動に詳しい某大学の教授が、このテーマをまったく別の視点から検証しました。それが、今までとまったく同じメニューで、学生食堂のレイアウトや料理の並べ方だけを変えるという方法です。“何を”提供するかではなく、“どのように”提供するかを変化させ、人間の脳の意思決定の仕組みに合わせたアプローチをとったのです。

つまり、これまで肉とかプライドポテトとか、スナックとか、ハンバーガーなどのジャンクフードが前にあったのを、、↓の図のようなレイアウトにしたわけです。すると、、

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学生たちの行動の変化


ブロッコリーを最初のほうに並べたら、消費量が10?15%増加した。

オレンジなどのフルーツの容器をステンレスのボウルからおしゃれなボウルに変えたら、消費量は2倍以上に増加した。

アイスクリーム用冷凍庫のふたを透明から半透明に変えると、アイスクリームを食べる学生が30%から14%に減少した。

健康的なデザート(フルーツ)の料金は、ほかのメニューと一緒に支払えるが、クッキーのような不健康なデザートは別に支払わなければならないシステムにしたところ、消費量はフルーツが71%増加、クッキーは55%減少した。

?チョコレート牛乳を牛乳の後ろに置き、自力では手が届かないようにすると、牛乳を選ぶ学生が増加した。

などなど、、これまで学生たちの行動を変えるのにあんなに苦労していたのが、いとも簡単に変わってしまいました。しかも面白いのが、、学生たちはこの食堂の変化にまったく気づいていなかったということ。でも、結果的に彼らの摂取カロリーは大幅に減少し、かなりバランスの良いメニューを自発的に選ぶようになっていたのです。

なぜ、並べ方、見せ方、手に取るための手間など、、人間の意思決定の判断におけるほんのわずかな違いが、こんなにも大きな影響を及ぼすんでしょうか?その背景にはどんな原理があるんでしょうか?「潜在意識マーケティング6つの心理戦略」に書かれていた分析を元に少し紹介していきます…


“何を”提示するかだけでなく、“どのように”提示するか


まず最初に背景情報として、食事を選ぶ前の学生の状態が重要です。もし、彼らが空腹であれば(まあ食堂に来る時点でおそらくそうでしょうが、、)満腹になりたいという目的に合う選択肢を、自動的に脳の思考システムが探そうとします。=まず最初に目に入るメニューが高く評価されるので、奥にあるものよりも入り口の近くにあるものの方が価値が高く感じられます。

逆に、プレートが山盛りになってくる後半では、心理的な満足感が高くなるので、その後に目にするメニューの知覚価値が低くなってしまいます。そして、空腹だと、最初に登場するメニューでその問題を解消しようとするので、後のメニューに残されるスペースは必然的に少なくなります。(これ、まさに僕がビュッフェで失敗したパターンと同じですね。。笑)

ブロッコリーのケース:
なので、ブロッコリーについては、1番最初の場所に置き場を変更したことで、購入に向けた選択プロセスの最初のほうに並べられるようになったため、すでに肉料理やフライドポテトであふれたプレートよりも、何もないプレートのときのブロッコリーの知覚価値が大幅に高くなり、選ばれるようになったというわけです。

オレンジの容器変更のケース:
これは、商品のパッケージを変えたら売れるようになるのと同様、”フレーミング”によって、その知覚価値が上がったことにつながっています。簡単にいうと、おいしそうに見えるので価値が高まったということですね。

アイスクリームのケース:
冷凍庫のふたを半透明にすると、意思決定の第1ステップ「知覚」の障害になるそうです。「アイスクリーム」ってめちゃくちゃ脳の快楽のポイントを刺激するんですが、一目で中身が見えないので、アイスクリームだと分からない。=脳はそれを食べようと思いつかなくなるそうです。

支払いシステムの変更:
冷静に考えると、クッキーを選んだ学生は、ほかのメニューと別に払っても、一緒に払っても、トータルの支払金額に違いはありません。でも、、それによって感じる負担は大きく変わり、一緒に払えるというだけで、特段クッキーだけの費用負担を感じないようになります。

一方で、ほかのメニューとは別に支払う必要があれば、金額がはっきりするので「苦痛」が目に見える状況になって知覚できる費用は高くなります。めちゃくちゃ単純ですが、事実、それだけでクッキーを買う学生が減るということです。

チョコレート牛乳のケース:
まず、これはアイスクリームのときと同じですが、、チョコレート牛乳を牛乳の後ろに置くことによって、チョコレートがあるという快楽の信号が脳に届かないので、欲しいと思いません。

プラス、、ここがミソなんですが、自分では取れない=誰かに取ってもらわなければならないので、行動費用が高くなりちゅうちょします。多分あなたも経験があるでしょうが、特に自分の後ろにほかの学生が並んでいると、時間的なプレッシャーを感じるので、よりチョコレート牛乳を選びにくくなる。そして、結果的に学生は、手に取りやすく、行動費用の低い牛乳を選ぶというわけです。

どうでしょうか?“何を”提示するかだけでなく、“どのように”提示するかによって、知覚価値と意思決定がここまで大きく変化するというのは、あまりに衝撃的ですよね。そんなに些細なことで、ここまで行動が変わってしまうのか・・とショックを受けませんか?おそらく、意外すぎて、自分は違う。自分はそんなことでは騙されない。と、抵抗を感じる方もいるでしょう。(実際、僕はこれを最初に読んだ時そう感じました。)

でも、これは学生だけじゃなく、例えば死ぬほど頭のいい人でも、その道のプロと言われる人であっても、同じような研究結果が出ていて、わかっていても避けることができないものらしいんです…


たとえ頭が良くても、その道のプロでも、、
ほんの些細なことで操作される…


最も就職したい会社ランキング1位、転職したい会社ランキング1位に何度も選ばれ、世界でもトップクラスの頭脳を持つ天才が集まるといわれる「Google」。なんと、これと同様の実験をGoogleの社員食堂で行った事例もあります。その結果は・・

目立つところにつり下げていたスイーツを、半透明の瓶に入れ替えたところ、わずか1週間でスイーツの摂取量が9%減少。

最初に目に入るものからプレートに取る傾向があるので、食堂の入口にサラダバーを移動したところ、野菜の摂取量が増加。

以前、水は水道水を飲み、ソーダは冷蔵庫に入れていたが、冷蔵庫の目線の位置にミネラルウォーター、下のほうにソーダを移動したところ、、水の摂取量が47%増加。

などなど、、世界レベルの頭脳を持つGoogleの社員でさえ、学生たちと同様に影響を受けることがわかりました。

また別の例では、、食や健康の専門家である”栄養士”を対象にした実験を行いました。同僚の祝賀会で「アイスクリームパーティー」に出席した栄養士に、大あるいは小のカップ、大あるいは小のスプーンのいずれかを無作為に渡すと、、栄養の専門知識があるにもかかわらず、大きなカップの場合は31%、大きなスプーンの場合は14%、食べる量が無意識に増えていたそうです。。

このように、たとえその道のプロであっても“何を”提示するかだけでなく、“どのように”提示するかによって、結果が大きく左右されてしまうのです。

もちろん、これは商品の質を高めなくても、テクニックを使えば売れるというわけではありませんし、どんな悪いものでもテクニックを使えば売れるんだよ。という話でもありません。

ただ、もしあなたが素晴らしい商品を扱っていて、実際にマーケティングを学んで実践している人であれば、、このようなことも頭に入れて、意識をしていくことで、あなたの商品がお客さんに受け入れられやすくなり、今よりもっと簡単にマーケティングの成果を大きくできるのではないでしょうか。

「“何を”提示するかだけでなく、“どのように”提示するか」ぜひ、意識をしてみてください。

萩原 敬大

PS.
実際、このような概念は、実際のマーケティングに落とし込むのが難しいんですが、それを20年以上かけて体系化したのが、リッチ・シェフレンです。正直、使いこなすのは簡単ではないですが、もしあなたがもっとマーケティングの成果を大きくしたいと思うなら、、この「D3」にチャレンジしてみてください。

詳しくはこちら

PPS.
ちなみに、今日紹介したリッチが推薦する書籍:「潜在意識マーケティング6つの心理戦略」は、すでに販売終了していますが、この「D3」とはとても相性がいいので、今回参加してくれた方には無料でプレゼントします。

 

萩原 敬大
萩原 敬大

Strategic Profits マーケティングマネージャー
メールマガジン購読者数41,238人(2017年1月5日時点)日本におけるリッチ・シェフレンの独占販売権を持つ【Strategic Profits】のマーケティングマネージャー兼セールスライター。販売プロモーションの企画、広告運用、セールスコピーのライティングなどを統括している。

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